Integrated Machining
深穴と外形の一貫加工のメリット|工程を分けると精度と納期に何が起きるか
深穴と外形を分業すると何が起きるのかを整理し、一貫加工の利点と工程順序の考え方、外形加工済みワークの注意点を解説します。
公開 ・ 製造業向け記事
深穴と外形を別々の会社や工程で加工すると、基準の取り直しによる同軸度・偏肉のばらつき、輸送と段取りの重複によるリードタイムの延長、不具合時の責任の分散といった問題が起こりやすくなります。深穴と外形を一貫して加工すれば、同じ基準で工程を組み立てられるため、精度の安定と納期の短縮、窓口の一本化を同時に実現しやすくなります。本記事では、工程を分けたときに何が起きるのかを整理したうえで、一貫加工の利点、外形先行と深穴先行の考え方、外形加工済みワークに深穴をあけるときの注意点を解説します。
深穴と外形の一貫加工とは
深穴を持つ部品は、多くの場合「深穴」と「外形」の二つの加工で成り立っています。外形はCNC旋盤やマシニングセンタ、研削盤などで、深穴はガンドリルなどの専用機で加工するのが一般的です。使う機械や技術が異なるため、外形は部品メーカーや一般の機械加工会社、深穴は深穴加工の専門業者、というように工程を分けて手配されることが少なくありません。
これに対して一貫加工とは、材料の受け入れから外形加工、深穴加工、仕上げ、検査までを一つの会社(または一つの工程設計)の中で連続して行うことを指します。単に「同じ会社で全部やる」というだけでなく、外形と深穴の基準をそろえ、工程の順序や治具を部品に合わせて最初から設計できる点に意味があります。
深穴加工そのものの基本については深穴加工とは?ガンドリル加工の仕組み・精度とBTA・放電加工との違いで解説しています。本記事では、深穴と外形の「組み合わせ方」に焦点を当てます。
工程を分けると何が起きるか ─ 分業の4つのリスク
工程を分けること自体が悪いわけではありません。それぞれの得意分野を持つ会社に任せることで、技術や設備を活かせる場面もあります。ただし、深穴と外形の間には「位置関係の精度」という強いつながりがあるため、工程を分けると次のようなリスクが生まれます。
1. 基準の取り直しによる誤差の積み上がり
加工は必ず何かを基準にして行います。外形加工の会社はチャックで掴んだ外周や端面を基準にし、深穴加工の会社は受け取ったワークの外形や端面を改めて基準として設定します。このとき、ワークを掴み直すたびに位置決めの誤差が生じます。外形加工側の誤差と、深穴加工側の位置決め誤差、さらに穴の曲がりが積み重なることで、最終的な同軸度や位置精度が悪化します。
2. 同軸度・偏肉のばらつき
基準の取り直しで生じた誤差は、外径と穴の中心のずれ、つまり同軸度の悪化や偏肉として現れます。特に外径に対して穴径が大きい部品や、肉厚の均一性が求められる部品では、わずかなずれが不良に直結します。さらに、外形加工の段階で生じた寸法のばらつきが、深穴加工側の保持状態に影響し、ロットの中でも品質がそろわない原因になることがあります。同軸度と同心度の考え方は同心度と同軸度の違いとは?の記事で詳しく解説しています。
3. 輸送・段取り・リードタイムの増加
工程を分けると、会社間の輸送が発生します。梱包と輸送の手間に加え、輸送中の打痕や錆のリスクも増えます。受け取った側では、受入検査やワークに合わせた段取りを改めて行う必要があります。それぞれの会社の生産計画に合わせて待ち時間も生じるため、加工そのものの時間よりも、工程の間の時間がリードタイムを大きく延ばすことが少なくありません。
4. 責任の分散と不具合対応の遅れ
最終検査で同軸度が規格を外れた場合、その原因が外形加工にあるのか、深穴加工にあるのかを切り分けるのは簡単ではありません。双方が自社工程の範囲では図面どおりと判断していれば、原因の特定と対策に時間がかかります。発注者が両社の間に立って調整することになり、購買や品質保証の担当者の負担も大きくなります。
4つのリスクのうち、精度に直接かかわるのは外形と穴の位置関係、つまり同軸度です。同軸度がばらつく要因を整理すると次の図のようになります。工程を分けると、これらの要因を管理する主体が二つの会社に分かれ、どこでずれが生じたのかが見えにくくなります。
このうち「保持部の寸法ばらつき」と「掴み直しの位置決め誤差」は、工程の分け方によって大きさが変わる要因です。一方で「穴の曲がり」や「回転方式」は、深穴加工の機械と工具に依存します。一貫加工では、これらをまとめて一つの工程設計の中で管理できるため、どの要因を優先して抑えるべきかを判断しやすくなります。
一貫加工のメリット ─ 分業との比較
一貫加工の最大の利点は、外形と深穴を「同じ考え方の基準」で加工できることです。工程の最初から最後までを一つの流れとして設計できるため、どこを基準にするか、どの順番で削るか、どの段階で何を測るかを部品ごとに最適化できます。その結果として、次のようなメリットが得られます。
- 精度の安定:基準の取り直しを最小限にし、同軸度や偏肉のばらつきを抑えやすくなります。
- リードタイムの短縮:会社間の輸送や重複した受入検査がなく、工程の間の待ち時間も減らせます。
- 窓口の一本化:見積もり、図面の確認、納期調整、品質の問い合わせを一つの窓口で行えます。
- 責任の明確化:不具合が起きた場合も、工程全体を見たうえで原因を特定し、対策を打てます。
- 工程設計の自由度:荒加工と仕上げを分けるなど、精度に合わせた順序を柔軟に組めます。
分業と一貫加工を、主な観点で比較すると次のようになります。評価は一般的な傾向を示したもので、部品の形状や発注条件によって変わります。
| 比較項目 | 工程分業(外形と深穴を別手配) | 一貫加工 |
|---|---|---|
| 同軸度・偏肉の安定 | △ | ◎ |
| 基準の一貫性 | △ | ◎ |
| リードタイム | △ | ◎ |
| 輸送中の打痕・錆のリスク | × | ◎ |
| 不具合時の原因特定 | × | ◎ |
| 発注・管理の手間 | △ | ◎ |
| 工程順序の柔軟性 | ○ | ◎ |
なお、すでに外形加工を自社や取引先で行っていて、深穴だけを外部に出したいという場合もあります。その場合でも、深穴加工側が外形加工の内容を理解していれば、基準の取り方や保持方法を工夫してリスクを小さくできます。この点は後半の「外形加工済みワークへの深穴加工」で説明します。
一貫加工の流れと、外形先行・深穴先行の考え方
一貫加工の代表的な流れを図にすると次のようになります。実際の工程は部品によって前後し、外形の荒加工と仕上げの間に深穴加工を入れる、深穴の後にホーニングで内面を仕上げる、といった組み替えを行います。
外形先行 ─ 外形を基準にして深穴をあける
外形を先に仕上げ、その外形を基準に深穴をあける方法です。外形の真円度や真直度、段付き形状や溝などを先に確保できるため、外形の精度が重視される部品や、外形に複雑な形状がある部品で選ばれます。深穴加工の段階でワークの外周を保持しやすく、ガイドブッシュとワークの位置関係も決めやすいのが特徴です。
一方で、深穴加工で生じる穴の曲がりは、外形に対する同軸度のずれとしてそのまま残ります。そのため、深穴の真直度を確保できる機械と工具、回転方式の選定が重要になります。
深穴先行 ─ 穴を基準にして外形を仕上げる
素材の段階で深穴を先にあけ、その穴を基準にして外形を仕上げる方法です。外形を削る際に穴へ心金を通したり、穴の両端をセンタとして使ったりすることで、穴に対して外形の中心を合わせられます。同軸度や肉厚の均一性を重視する部品、特に薄肉の部品で有効な考え方です。
ただし、深穴の曲がりに沿って外形を仕上げることになるため、部品全体の真直度が求められる場合は注意が必要です。また、外形加工の段階で穴の内面を傷つけないよう、保持方法にも配慮が必要です。
どちらの方法でも、外形と深穴を同じ会社で加工していれば、途中で測定して次の工程の基準を修正する、といった調整がしやすくなります。これが分業との大きな違いです。
外形加工済みワークへの深穴加工 ─ 注意点
外形を自社で加工し、深穴だけを外部に依頼したいという相談も多くあります。この場合、次の点をあらかじめ確認しておくと、品質と納期のトラブルを減らせます。
- 基準面の指定:深穴の位置や同軸度をどの面(外径、端面、段部など)に対して管理するのかを図面で明確にします。
- 外形の寸法と形状のばらつき:保持する外径の公差や真円度が大きいと、深穴加工時の位置決めがばらつきます。保持部の実寸データがあると条件を詰めやすくなります。
- 表面の扱い:仕上げ面やめっき面など、保持による傷や圧痕を避けたい面があれば事前に伝えます。
- 熱処理や表面処理の順番:熱処理後に深穴をあけるのか、深穴の後に熱処理するのかで、材料の硬さや変形の出方が変わります。
- 予備品の準備:条件出しや試し加工のために、可能であれば予備のワークを用意すると安心です。
外形加工済みのワークは、すでに加工の付加価値が乗っているため、深穴加工で不良が出ると損失が大きくなります。深穴加工の依頼先が外形加工の設備と経験を持っていれば、保持方法や治具の設計、基準の取り方について、外形側の事情を踏まえた提案を受けやすくなります。
依頼するときに伝えたい情報
一貫加工の見積もりや工程の検討をスムーズに進めるために、次の情報を図面とあわせて伝えることをおすすめします。
| 伝えたい情報 | 理由 |
|---|---|
| 材質と熱処理の有無 | 工具・切削条件と工程順序の検討に必要 |
| 穴径・深さ・本数 | 使用する機械とガンドリルの選定に必要 |
| 同軸度・位置度・肉厚の要求 | 外形先行か深穴先行かの判断材料になる |
| 内面粗さ・真円度の要求 | ホーニングなど後工程の要否を判断する |
| 数量と納期 | 試作と量産で工程や治具の考え方が変わる |
| 支給品か材料手配か | 外形加工済みワークの支給なら保持方法を検討する |
内面の仕上げが必要な場合は、深穴加工の後にホーニング加工を組み合わせることで、真円度や円筒度を改善できます。詳しくはホーニング加工のページをご覧ください。
ハイタックの深穴・外形一貫加工
ハイタックはガンドリルマシンのメーカーとして、深穴の受託加工と外形加工を一貫して行っています。主な対応範囲は次のとおりです。
- 外形加工(CNC旋盤、マシニングセンタ、ワイヤ放電、円筒研削盤ほか)と深穴を一貫対応。外形加工済みワークへの深穴加工も対応
- 対応穴径φ0.5〜30mm。φ0.5×30L〜φ30.0×1,500Lの深穴加工(ガンドリル加工)、長さ3,000mm(トンボ加工)の長尺深孔加工にも対応
- 穴径精度±0.05以内、面粗度3.2S(Ra0.023の実績あり)、要求同芯度φ0.05以内の実績あり
- ホーニング加工:対応φ2.0〜φ20.0、加工長〜1000mm
- 自社製ガンドリルマシン35台、1,000種類以上のガンドリル(工具含む)。特殊治具も自社製作
- 東京精密 RONDCOM 60A(真円度・円筒度・同心度・同軸度)、東京精密 SURFCOM 480B(表面粗さ)、ミツトヨ MiSTAR 555(三次元測定)、画像寸法測定器
- ISO 9001:2015 認証取得、医療機器製造業登録。試作1本から量産まで対応
外形と深穴の一貫加工の内容は外形加工(深穴+外形)のページ、保有している機械は設備一覧でご確認いただけます。
「外形と深穴を別々に手配していて、同軸度が安定しない」「工程をまとめてリードタイムを短くしたい」といったご相談も承っています。図面と数量、納期をお知らせいただければ、工程の組み方からご提案します。ご相談はお問い合わせページからお寄せください。お問い合わせには通常24時間以内(営業日)に返信しています。お電話の場合は受託加工 055-939-5444(受付 月〜金 8:00〜17:00)までどうぞ。
よくある質問
深穴と外形を一貫加工すると、なぜ同軸度が安定しやすいのですか?
工程の最初から外形と深穴の基準をそろえて設計でき、ワークの掴み直しによる位置決め誤差の積み上がりを抑えられるためです。途中で測定して次の工程の基準を調整することも、同じ会社の中であれば行いやすくなります。
外形と深穴は、どちらを先に加工するのが一般的ですか?
決まった順序はなく、部品の要求によって選びます。外形の精度や形状を優先する場合は外形先行、同軸度や肉厚の均一性を優先する場合は深穴先行が選ばれる傾向があります。外形の荒加工、深穴加工、外形の仕上げと交互に進める方法もあります。
自社で外形を加工したワークに、深穴だけを依頼できますか?
ハイタックでは、外形加工済みワークへの深穴加工にも対応しています。深穴の位置をどの面に対して管理するか、保持してよい面と傷を避けたい面、熱処理の有無などを図面とあわせてお知らせください。
一貫加工は試作1本でも依頼できますか?
はい、ハイタックでは試作1本から量産まで対応しています。試作の段階で工程順序や保持方法を確認しておくと、量産に移るときの品質も安定しやすくなります。
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