Small Diameter Deep Hole
小径深穴加工が難しい理由とは?φ0.5〜φ3の課題とガンドリルでの解決法
細く深い穴ほど、工具剛性や切りくず排出の課題は一気に厳しくなります。難しさの理由と、ガンドリルでの解決法を整理しました。
公開 ・ 製造業向け記事
φ0.5〜φ3程度の小径深穴加工が難しいのは、工具が細く剛性が低いうえに、切りくずの排出、クーラントの供給、穴の曲がり、工具折損、測定といった課題が同時に厳しくなるためです。ガンドリルは、工具内部からクーラントを送りV溝から切りくずを排出する構造と、ガイドブッシュによる案内で、これらの課題にまとめて対処できる加工法です。本記事では、小径深穴加工が難しい理由を6つに分けて整理し、ガンドリルでどのように解決するのかを解説します。
小径深穴加工とは ─ 径が小さいほど深さの意味が変わる
小径深穴加工とは、一般に直径数mm以下の細い穴を、径に対して深く開ける加工のことです。深さの目安には、穴の深さを穴径で割ったL/D比がよく使われます。L/D比がおおむね10を超えると深穴と呼ばれ、値が大きくなるほど加工は難しくなります。L/D比の考え方は「L/D比が高い深穴加工の5つの課題と対策」でも詳しく解説しています。
同じ深さ50mmの穴でも、φ10ならL/D比は5ですが、φ1ならL/D比は50になります。小径になるほど、わずかな深さでも高いL/D比になるのが小径深穴の特徴です。さらに、工具の断面が小さくなることで、剛性・切りくずの通り道・クーラントの流路がいずれも極端に細くなります。大きな穴の深穴加工をそのまま縮小すればよい、というわけにはいきません。
小径深穴は、医療機器の流路や器具、燃料噴射やセンサーまわりの自動車部品、分析装置のノズル、金型の冷却穴など、さまざまな部品で求められています。部品の小型化や高機能化が進むにつれて、細く深い穴の需要は広がっています。
小径深穴加工が難しい6つの理由
小径深穴加工の難しさは、単独の課題ではなく、複数の要因が絡み合って生まれます。下の図は、その主な要因を整理したものです。
1. 工具剛性が低い
工具の曲がりにくさは、径が小さくなると急激に低下します。一般に丸棒の曲げ剛性は直径の4乗に比例するため、径が半分になると曲がりにくさはおよそ16分の1になります。さらに工具が長くなるほどたわみやすくなるため、細く長い小径深穴用の工具は、わずかな切削抵抗の偏りでも横に逃げやすくなります。
2. 切りくずが排出しにくい
小径の穴では、切りくずが通る隙間も非常に狭くなります。排出経路が長いうえに狭いため、切りくずが途中で詰まりやすく、詰まると切削抵抗が急に高まります。一般的なドリルでは、途中で工具を引き戻して切りくずを出すステップ送りが使われますが、深くなるほど回数が増え、加工時間が延びるうえ、引き戻しのたびに工具へ負荷がかかります。
3. クーラントが刃先まで届きにくい
外部からクーラントをかけるだけでは、深い穴の奥にある刃先まで十分に届きません。刃先の冷却と潤滑が不足すると、摩耗が早まり、切りくずの溶着も起こりやすくなります。工具内部に油穴を設ける場合も、小径工具では油穴自体が非常に細くなるため、必要な流量を確保するには高い圧力で送り込む必要があります。
4. 穴が曲がりやすい
剛性の低い工具は、加工の入口での位置ずれや、材料の硬さのばらつき、切削抵抗の偏りなどの影響を受けやすく、穴の進行方向がずれていきます。深くなるほどずれが積み重なり、出口位置のずれや真直度の悪化として現れます。ハイタックの深穴加工の技術については「深穴加工技術」のページで紹介しています。
5. 工具が折れやすい
小径工具は、切りくず詰まりによる急な負荷変動や、曲がった穴の中で無理な力がかかることで、折損しやすくなります。小径の深穴で工具が折れると、穴の中に残った工具を取り除くのが難しく、ワークそのものが不良になることも少なくありません。外形加工を済ませた付加価値の高いワークでは、とくに大きな損失になります。
6. 加工後の測定が難しい
φ1前後の細く深い穴は、測定器のプローブや測定子を奥まで入れることが難しく、入口付近しか測れない場合があります。一般には、ピンゲージによる通り確認、入口と出口の位置測定、画像測定による穴径の確認などを組み合わせます。穴の奥の真直度や内面の状態を詳しく確認したい場合は、ワークを切断して観察する方法や、X線CTなどの非破壊検査が検討されることもあります。どの項目をどの方法で保証するかを、加工前に決めておくことが大切です。
ガンドリルが小径深穴に向いている理由
ガンドリルは、深穴加工のために設計された専用の工具です。片側にだけ切れ刃をもつ工具の内部に油穴があり、外周にはV字形の溝が軸方向に通っています。この構造が、前章で挙げた課題の多くに直接対応しています。
内部給油とV溝による切りくず排出
ガンドリル加工では、工具内部の油穴を通して高圧のクーラントを刃先へ直接送り込みます。刃先に届いたクーラントは、冷却と潤滑を行ったあと、切りくずを伴ってV溝を通り、穴の入口側へ押し流されます。クーラントの流れそのものが切りくずを運ぶため、ステップ送りに頼らず連続して加工を進められます。切りくず排出とクーラント供給という2つの課題を、同じ仕組みで解決しているのがガンドリルの大きな特徴です。
ガイドパッドとガイドブッシュによる案内
ガンドリルの先端には、切れ刃のほかにガイドパッドと呼ばれる部分があり、加工したばかりの穴の内面に接しながら工具を支えます。切削抵抗をこのパッドで受け止めるため、細い工具でも穴の中で姿勢が安定し、曲がりにくくなります。
加工の入口では、ガイドブッシュが工具を正しい位置と向きに導きます。工具が穴に入りきるまではガイドブッシュが、入ったあとは自分で開けた穴が案内役になるという仕組みです。入口での案内精度が穴全体の真直度を左右するため、ブッシュの精度と工具とのすき間の管理が重要になります。長い工具では、途中で工具の振れを抑える振れ止めも使われます。
回転方式の使い分け
ガンドリル加工の回転方式には、主に次の3つがあります。ワークの形状と求める真直度に応じて選びます。
| 回転方式 | 動き | 真直度の確保 | 異形ワークへの対応 |
|---|---|---|---|
| 工具回転 | ワークを固定し、工具だけを回す | ○ | ◎ |
| ワーク回転 | 工具を回さず、ワークを回す | ◎ | △ |
| 相対回転 | ワークと工具を互いに逆向きに回す | ◎ | △ |
一般に、ワークを回転させる方式は、工具が回転の中心に向かって自然に案内されるため、穴の曲がりを抑えやすいとされています。一方、回転させにくい角物や大きな異形ワークでは工具回転方式が選ばれます。ここでの◎○△は一般的な傾向を示した目安です。
工具径の選び方と小径ならではの注意点
小径深穴では、穴径の公差に対して工具径をどう選ぶかが、品質を大きく左右します。ガンドリルで開けた穴は、一般に工具径に近い寸法に仕上がるため、図面の穴径に合った径の工具を用意できるかどうかが重要です。工具径の選択肢が少ないと、狙いの寸法から外れた径で加工するか、別の仕上げ工程を追加することになります。
また、小径工具は刃先そのものが非常に小さいため、刃先のわずかな欠けや摩耗でも切削抵抗のバランスが崩れ、曲がりや折損につながります。工具の状態を定期的に確認し、摩耗が進む前に交換や再研削を行うことが、安定した加工につながります。クーラントについても、細い油穴を詰まらせないよう、ろ過を行って異物を取り除いておくことが欠かせません。
材質によっても難しさは変わります。ステンレス鋼やニッケル合金のように粘りがあり加工硬化しやすい材料では、切りくずが分断されにくく、刃先の温度も上がりやすくなります。一方、樹脂は熱で変形しやすく、アルミニウムは刃先への溶着が起こりやすいなど、材料ごとに条件の考え方を変える必要があります。
L/D比で見る小径深穴加工の到達点
小径深穴でどこまで深く加工できるかを、L/D比で比べてみます。一般的なツイストドリルやロングドリルの値は、工具や条件によって大きく変わるため、ここではあくまで目安として示しています。ハイタックの値は、φ0.5×30L の対応範囲と、φ1.0mm×深さ400mm の実績から求めたものです。
ハイタックは、2017年に開発した新型ガンドリルマシンで、φ1.0mmの穴径で深さ400mm(L/D 400)の深孔加工を実現しました。サイトでは「世界初」と表記している実績です。また、2014年には新型の高精度小径用ガンドリルマシンで φ0.5 からの深孔加工を実現し、2020年には φ0.5 で深さ 60L を達成しています(世界最小ガンドリル)。
小径深穴加工を依頼する前に確認したいこと
小径深穴加工は、図面の段階で確認しておくことで、加工のしやすさやコストが大きく変わります。ご相談の際には、次の項目を整理しておくとスムーズです。
- 穴径と深さ:L/D比はいくつか、貫通穴か止まり穴か
- 穴径の公差:工具径の選び方に直結します。0.1mm単位で工具径を選べると、狙い寸法に近い工具を使えます
- 真直度・位置度・同軸度の要求:出口位置のずれをどこまで許容できるか
- 面粗度:ガンドリル加工だけで足りるか、ホーニングなどの後工程が必要か
- 材質とワーク形状:難削材かどうか、丸物か角物か、外形加工済みか
- 検査方法:どの項目をどの測定方法で保証するか
とくに測定方法は、加工後に「測れない」ことが判明すると品質保証が難しくなるため、早い段階で加工側とすり合わせておくことをおすすめします。
ハイタックの小径深穴加工
ハイタックは、ガンドリルマシンメーカーとして自社で開発した機械と工具を使い、小径深穴の受託加工を行っています。
| 項目 | 対応範囲・実績 |
|---|---|
| 対応穴径 | φ0.5〜30mm |
| 深穴加工の範囲 | φ0.5×30L〜φ30.0×1,500L |
| 小径の深孔加工実績 | φ1.0mm×深さ400mm(L/D 400) |
| 長尺深孔加工 | 長さ3,000mm(トンボ加工)に対応 |
| 穴径精度 | ±0.05以内 |
| 小径工具の保有 | φ0.5〜φ25.0を0.1mm単位で保有 |
- 自社製ガンドリルマシン35台、1,000種類以上のガンドリル(工具含む)を保有し、特殊治具も自社で製作
- 相対回転型の JDH/SDH-600-RF は φ0.5mm から対応し、片肉 0.5mm・0.25mm の薄肉加工が可能(肉厚 0.15mm の加工実績)。偏芯穴や角物にも対応
- JDH/SDH-600-JTF は穴径 φ1.0(0.5)〜6.0mm に対応
- インコネル、ハステロイ、純チタン・チタン合金(βチタン、64チタン)、Co合金、Ni合金、銅、一般鋼材全般(SUS、アルミ他)、樹脂(PEEK材他)の加工実績
- 加工事例:医療分野 SUS420 φ1.6×125mm(Ra0.24μm)、産業機械 タングステン φ1.0×40mm、分析装置 A7075 φ1.5×50mm
- 試作1本から量産まで対応。ISO 9001:2015 認証取得、医療機器製造業登録
医療分野での小径深穴の活用例は「医療系器具」のページで、受託加工の詳細は「深穴受託加工」のページで紹介しています。
「φ1以下で深い穴が必要」「ほかの加工法では曲がりや折損が解決できない」といったお悩みがあれば、穴径・深さ・材質・要求精度をお知らせください。工具径の選定から検査方法まで含めてご提案します。お問い合わせページからご相談いただけます。受託加工のお電話は 055-939-5444(受付 月〜金 8:00〜17:00)です。
よくある質問
小径深穴加工は何mmの穴から対応できますか?
ハイタックでは φ0.5mm から対応しています。深穴加工の範囲は φ0.5×30L〜φ30.0×1,500L で、φ1.0mm では深さ400mm(L/D 400)の深孔加工の実績があります。
小径の深穴をドリルで加工すると何が問題になりますか?
一般的なドリルでは、穴が深くなるほど切りくずが詰まりやすく、クーラントも刃先に届きにくくなります。ステップ送りで対処すると加工時間が延び、工具への負荷も増えます。また、細い工具はたわみやすいため、穴の曲がりや工具の折損が起こりやすくなります。
中途半端な穴径でも工具を用意できますか?
ハイタックでは、φ0.5〜φ25.0 のガンドリルを 0.1mm 単位で保有しています。図面の穴径と公差をお知らせいただければ、保有工具の中から適した径をご提案します。
小径深穴の曲がりはどのように確認しますか?
一般には、入口と出口の位置を三次元測定機や画像測定器で測り、ずれ量を確認します。ピンゲージによる通り確認や、必要に応じてワークの切断観察も組み合わせます。どの項目をどう保証するかは、加工前にご相談ください。
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その穴、
まずはご相談ください。
図面がなくても構いません。材質・穴径・深さをお知らせいただければ、加工可否と最適な方法をご提案します。通常24時間以内(営業日)にご返信します。
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