Honing Process
ホーニング加工とは?仕組み・精度とガンドリル下穴との組み合わせを解説
砥石の回転と往復で穴の内面を整えるホーニング加工。改善できる精度と限界、ガンドリル下穴と組み合わせる理由を加工例で解説します。
公開 ・ 製造業向け記事
ホーニング加工とは、砥石を回転させながら穴の軸方向に往復させ、内面をわずかずつ削って真円度・円筒度・面粗度を整える内径仕上げの方法です。ガンドリルで開けた深穴の下穴にホーニングを組み合わせると、深い穴でも形状精度と内面品質を高めやすくなります。一方で、下穴の位置や大きな曲がりを直す力には限りがあるため、下穴の品質と組み合わせて工程を考えることが大切です。本記事では、ホーニング加工の仕組み、改善できる精度、リーマ・内面研削との違い、深穴の後工程として使う理由を、加工例の数値とあわせて解説します。
ホーニング加工とは ─ 砥石の回転と往復で内面を仕上げる
ホーニング加工は、ホーン(ホーニングツール)と呼ばれる工具の外周に取り付けた棒状の砥石を、穴の内面に一定の圧力で押し当てて行う精密仕上げです。工具は回転しながら穴の中を軸方向に往復し、砥粒が内面の高い部分から少しずつ削り取っていきます。削る量(取り代)は一般に数μmから数十μm程度と小さく、穴を「開ける」加工ではなく、すでにある穴を「整える」加工だと考えるとわかりやすくなります。
回転と往復運動が生むクロスハッチ
ホーニングの大きな特徴は、回転運動と往復運動を同時に行う点です。砥粒の軌跡は回転方向だけでなく軸方向にも動くため、内面には斜めに交差する細かな筋目が残ります。これをクロスハッチと呼びます。交差する角度は、回転速度と往復速度の比率で決まり、一般には往復速度を上げるほど角度が大きくなります。
クロスハッチは単なる加工痕ではなく、機能をもつ表面としても扱われます。たとえばエンジンのシリンダーや油圧シリンダーのように内面を部品が摺動する用途では、筋目の谷に潤滑油が保持されやすく、なじみや焼き付き防止に役立つとされています。用途によってはクロスハッチの角度や粗さが図面で指定されることもあります。
砥石の拡張と自己案内
ホーニングツールの砥石は、加工の進行にあわせて外側へ押し広げられます(拡張)。穴の小さい部分や狭まった部分では砥石が強く当たり、広い部分では弱く当たるため、穴の形状が全体として均一な円筒に近づいていきます。また、工具は主軸と柔軟に連結されることが多く、穴そのものに案内されながら動きます。このため、ホーニングは穴の「形」を整えることは得意ですが、穴の「位置」や「軸の向き」を大きく変えることは苦手です。この点は後の章で詳しく説明します。
ホーニング加工で改善できる精度と限界
ホーニング加工で主に改善が期待できるのは、次の3つの精度です。いずれも穴の「形」と「表面」に関する項目です。
- 真円度:穴の断面がどれだけ真円に近いか。楕円や多角形状(おむすび形)の変形を小さくできます。
- 円筒度:穴の全長にわたって、どれだけ一様な円筒になっているか。入口と奥で径が違うテーパや、中央がふくらむたる形を整えます。
- 面粗度(表面粗さ):内面の微細な凹凸。切削痕やびびり痕を取り除き、目的に応じた粗さと筋目に仕上げます。
このほか、穴径そのものを狙い寸法に追い込む寸法精度の向上にも使われます。表面粗さの指標や測り方については「表面粗さRaとは?Rz・RzJIS・Rsとの違い、測定方法と図面指示を解説」で詳しく紹介しています。
曲がりや位置ずれの補正には限界がある
一方で、ホーニングには苦手な領域もあります。前述のとおり、ホーニングツールは穴に案内されながら動くため、下穴の軸そのものが傾いていたり、大きく曲がっていたりすると、その軸に沿って仕上げることになります。取り代が小さいことも重なり、一般に次のような誤差を大幅に直すことは難しいとされています。
- 穴の位置(位置度)のずれ
- 穴軸の傾き(直角度など)
- 取り代を超えるような大きな曲がり
局所的な小さなうねりや曲がりであれば、砥石が高い部分を優先的に削ることで改善する場合があります。しかし、曲がりが大きいほど取り代を増やす必要があり、加工時間や穴径の制約との兼ね合いになります。そのため、深穴の精度を高めたい場合は「ホーニングで直す」と考えるより、「まっすぐな下穴をつくり、ホーニングで仕上げる」と考えるほうが現実的です。
仕上がりを左右する主な条件
ホーニングの仕上がりは、いくつかの条件の組み合わせで決まります。代表的なものは、砥石の種類と粒度、砥石を内面に押し当てる圧力(面圧)、回転速度と往復速度、往復させる範囲(ストローク)、そして加工中に使うホーニングオイルなどの油剤です。
一般に、粒度の粗い砥石は削る量が多く形を整えるのに向き、細かい砥石は面粗度を上げるのに向いています。そのため、粗仕上げと仕上げで砥石を替えて、段階的に加工することもあります。面圧を高くすると加工は速く進みますが、砥石の摩耗や発熱が増え、面粗度が悪くなることがあります。往復の端で工具が止まる位置も重要で、ストロークが適切でないと、入口や奥の部分だけ径が大きくなったり小さくなったりします。止まり穴の奥や、途中に横穴や溝がある穴では、とくにこの調整が仕上がりに影響します。
材料によっても適した砥石は異なります。焼入れ鋼などの硬い材料、ステンレス鋼のように粘りのある材料、アルミニウムのように目詰まりしやすい材料では、それぞれ砥石の選び方や条件の考え方が変わります。
リーマ・内面研削との比較
穴の内面を仕上げる方法には、ホーニングのほかにリーマ加工と内面研削があります。それぞれ得意分野が異なるため、要求精度と穴の深さ、生産量に応じて選びます。下の表は、一般的な傾向を ◎○△× で整理したものです。実際の可否は材質や穴径、設備によって変わるため、目安としてご覧ください。
| 比較項目 | リーマ加工 | 内面研削 | ホーニング加工 |
|---|---|---|---|
| 寸法精度 | ○ | ◎ | ◎ |
| 真円度・円筒度の改善 | △ | ○ | ◎ |
| 面粗度 | ○ | ◎ | ◎ |
| 穴位置・軸の傾きの修正 | × | ○ | △ |
| 深い穴(高L/D)への適用 | △ | × | ○ |
| 焼入れ鋼など硬い材料 | △ | ◎ | ◎ |
| 加工時間の短さ | ◎ | △ | ○ |
リーマ加工の特徴
リーマは、下穴に刃物を通して穴径を整える切削工具です。加工時間が短く、量産で使いやすい一方、工具が下穴にならって進むため、真円度や曲がりを大きく改善する力は限られます。また、穴が深くなると工具の振れや切りくずの排出が課題になり、深穴の全長を同じ品質で仕上げるのは難しくなりがちです。
内面研削の特徴
内面研削は、穴の中で高速回転する砥石を使い、機械の主軸を基準に穴を削り出す方法です。機械側の精度で穴の位置や軸を決められるため、位置や傾きの修正に向いています。ただし、砥石軸は穴より細くなければならず、深い穴では軸が長く細くなってたわみやすくなります。このため一般には、浅めの穴や比較的大きな径の穴で使われることが多い方法です。
ホーニング加工の位置づけ
ホーニングは、形状精度と面粗度の両方を高めやすく、穴に案内されながら加工するため深い穴にも適用しやすい方法です。位置や軸の修正は苦手ですが、その部分を下穴加工で確保できれば、深穴の仕上げとして有力な選択肢になります。
深穴の後工程としてホーニングを使う理由
ガンドリルは、工具内部からクーラントを送り、V溝から切りくずを排出しながら、片刃の工具でまっすぐな深穴を開ける加工法です。工具のパッド(ガイド部)が穴の内面に沿って支えられるため、細く深い穴でも穴の曲がりを抑えやすく、1回の工程で比較的良好な面粗度が得られます。
ただし、図面で真円度や円筒度、面粗度がさらに厳しく指定されている場合、ガンドリル加工だけでは要求に届かないことがあります。そこで、ガンドリルで「まっすぐで位置の正しい下穴」をつくり、ホーニングで「形と表面」を仕上げるという役割分担が生まれます。両者の得意分野がかみ合うため、深穴の工程設計では定番の組み合わせになっています。
役割分担のポイント
- ガンドリル(下穴)が担うこと:穴の位置、穴軸のまっすぐさ(曲がりの少なさ)、深さ、おおよその穴径
- ホーニング(仕上げ)が担うこと:仕上がり穴径、真円度、円筒度、面粗度、クロスハッチなどの表面性状
- 両者の間で決めること:ホーニングの取り代(下穴径をどれだけ小さくしておくか)と、下穴に求める精度の水準
取り代が少なすぎると下穴の誤差や加工痕を取り切れず、多すぎるとホーニングの時間が延び、穴の形状が崩れる原因にもなります。下穴の精度が高いほど取り代を小さく設定でき、ホーニング工程も安定します。下の図は、下穴加工から測定までの基本的な流れです。
工程間で確認しておきたいこと
下穴加工のあとに穴径や曲がりを測っておくと、ホーニングの取り代や条件を決めやすくなります。最終の測定では、穴径に加えて真円度・円筒度・面粗度など図面で指定された項目を確認します。深い穴では、入口付近だけでなく奥の状態まで確認できる測定方法を選ぶことが重要です。
ガンドリル下穴とホーニングの加工例(φ12mm×235L)
ここでは、ハイタックで行った φ12mm×235L の加工例を紹介します。ガンドリルで下穴を加工した段階と、その後ホーニングで仕上げた段階の測定値を比べたものです。
| 測定項目 | ガンドリル下孔 | ホーニング後 |
|---|---|---|
| 円筒度(mm) | 0.015 | 0.007 |
| 孔の曲り(mm) | 0.01 | 0.004 |
| 真円度(mm) | 0.001〜0.003 | 0.0009〜0.001 |
円筒度と孔の曲りについて、下穴とホーニング後の値を並べると次のようになります。
この例では、ホーニングによって円筒度・孔の曲り・真円度のいずれも小さくなっています。注目したいのは、下穴の段階ですでに孔の曲りが 0.01mm、真円度が 0.001〜0.003mm に収まっている点です。ホーニングで曲がりが改善できたのは、下穴の誤差が取り代の範囲で扱える大きさだったからだと考えられます。前章で述べたとおり、下穴の品質がホーニング後の仕上がりを左右するという関係が、数値にも表れています。
なお、改善の度合いは材質、穴径、深さ、取り代、条件によって変わります。この数値はあくまで一つの加工例として参考にしてください。
ハイタックのホーニング加工と深穴加工
ハイタックは、静岡県沼津市でガンドリルマシンの製造と深穴の受託加工を行っています。ガンドリルによる下穴加工からホーニング仕上げ、検査までを社内で一貫して対応できることが特長です。
| 項目 | 対応範囲・実績 |
|---|---|
| ホーニング加工 対応穴径 | φ2.0〜φ20.0 |
| ホーニング加工 加工長 | 〜1000mm |
| 深穴加工(ガンドリル)対応穴径 | φ0.5〜30mm |
| 深穴加工の範囲 | φ0.5×30L〜φ30.0×1,500L |
| 穴径精度 | ±0.05以内 |
| 面粗度 | 3.2S(Ra0.023 の実績あり) |
| 同芯度 | 要求同芯度 φ0.05 以内の実績あり |
- 自社製ガンドリルマシン35台、1,000種類以上のガンドリル(工具含む)を保有
- インコネル、ハステロイ、純チタン・チタン合金(βチタン、64チタン)、Co合金、Ni合金、銅、一般鋼材全般(SUS、アルミ他)、樹脂(PEEK材他)の加工実績
- CNC旋盤、マシニングセンタ、ワイヤ放電、円筒研削盤などによる外形加工と深穴を一貫対応
- 東京精密 RONDCOM 60A(真円度・円筒度・同心度・同軸度)、東京精密 SURFCOM 480B(表面粗さ)、ミツトヨ MiSTAR 555(三次元測定)、画像寸法測定器による検査
- 試作1本から量産まで対応。ISO 9001:2015 認証取得、医療機器製造業登録
ホーニング加工の詳細は「ホーニング加工」のページで、受託加工の進め方は「深穴受託加工」のページで紹介しています。測定の体制については「検査・品質管理」もご覧ください。
「深穴の円筒度や面粗度をもう一段上げたい」「下穴からホーニングまでまとめて任せたい」といったご相談は、穴径・深さ・材質・要求精度をお知らせいただければ、工程を含めてご提案します。お問い合わせページからお気軽にご連絡ください。お問い合わせには、通常24時間以内(営業日)に返信しています。
よくある質問
ホーニング加工で穴の曲がりは直せますか?
取り代の範囲で扱える小さな曲がりであれば、改善する場合があります。ハイタックの φ12mm×235L の加工例では、孔の曲りが下孔の 0.01mm からホーニング後に 0.004mm になりました。ただし、ホーニングツールは穴に案内されて動くため、大きな曲がりや穴位置のずれを直すことは一般に難しく、まっすぐな下穴をつくることが前提になります。
リーマ加工とホーニング加工はどう使い分けますか?
一般に、穴径を短時間でそろえたい場合はリーマ、真円度・円筒度・面粗度まで厳しく求められる場合や穴が深い場合はホーニングが向いています。リーマは下穴にならって進むため、形状精度の改善には限りがあります。
ハイタックではどの範囲のホーニング加工に対応していますか?
穴径 φ2.0〜φ20.0、加工長〜1000mm に対応しています。ガンドリルによる下穴加工からホーニング、検査まで社内で一貫して行えます。
クロスハッチとは何ですか?
ホーニングで砥石が回転と往復を同時に行うことで、内面に残る斜めに交差した筋目のことです。摺動部品では筋目の谷に潤滑油が保持されやすいとされ、用途によっては角度や粗さが指定されます。
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