Die Casting Steel
ダイカスト金型鋼とは?求められる特性・SKD61・深穴加工のポイント
ダイカスト金型鋼に求められる4つの特性と代表鋼種SKD61、硬さと粘りのバランス、冷却用の水穴を加工する深穴加工のポイントをわかりやすく解説します。
公開 ・ 材料・加工材料
ダイカスト金型鋼とは、溶けた金属を高い圧力で流し込むダイカスト用の金型に使われる鋼材で、耐熱性・耐摩耗性・靭性・加工性の4つの特性が求められます。代表的な鋼種はSKD61で、硬さと粘り(靭性)のバランスを考えた鋼材選びと、冷却用の水穴などの深穴加工の品質が、金型の寿命と製品の品質を左右します。この記事では、ダイカスト金型鋼の基本を初心者の方にもわかりやすく解説します。
ダイカスト金型鋼とは
ダイカストとは、アルミニウム合金や亜鉛合金などの溶けた金属を、金型に高い圧力で注入して短時間で固める鋳造法です。寸法精度の高い製品を大量に作れるため、自動車部品をはじめ幅広い分野で使われています。
このダイカスト製品の製造に欠かせないのが「金型」であり、その金型に使われる鋼材が「ダイカスト金型鋼」です。金型は溶けた金属に直接触れながら、注入・冷却・取り出しを何度も繰り返します。そのため、一般的な機械部品用の鋼材とは異なる性能が求められます。
ダイカスト金型が置かれている過酷な環境
ダイカストの金型は、鋳造のたびに高温の溶融金属にさらされ、その後冷やされます。加熱と冷却を繰り返し受けることで、金型の表面では熱による膨張と収縮が何度も起こります。これが積み重なると、表面に細かなひび割れ(ヒートチェック)が生じることがあり、金型の寿命を左右する代表的な損傷として知られています。
さらに、勢いよく流れ込む溶融金属や、成形品を取り出すときの摩擦も金型をすり減らします。こうした過酷な環境に長く耐えることが、ダイカスト金型鋼に求められる前提条件です。
ダイカスト金型鋼に求められる4つの特性
ダイカスト金型鋼には、過酷な環境のもとで安定した品質の製品を生み出すために、次の4つの特性が求められます。
| 特性 | どんな性質か | 金型での役割 |
|---|---|---|
| 耐熱性 | 高温にさらされても性質が変わりにくい | 溶融金属の高温に耐え、変形や劣化を防ぐ |
| 耐摩耗性 | こすれてもすり減りにくい | 金属の注入・取り出し時の摩擦に耐え、金型の寿命を延ばす |
| 靭性(じんせい) | 粘り強く、割れや欠けが起きにくい | 割れや欠けを防ぎ、安定した成形を可能にする |
| 加工性 | 削る・穴をあけるなどの加工がしやすい | 複雑な形状の金型を精密に製作できる |
これらの特性はお互いに影響し合うため、すべてを同時に最大にすることはできません。特に「硬さ(耐摩耗性)」と「粘り(靭性)」の関係は、鋼材選びで重要なポイントになります。
代表的なダイカスト金型鋼 ─ SKD61とその仲間たち
SKD61とは
数あるダイカスト金型鋼の中でも、特に有名なのが「SKD61」です。SKD61はJIS(日本産業規格)の合金工具鋼のうち熱間金型用に分類される鋼種で、クロム・モリブデン・バナジウムなどの合金元素を含んでいます。バランスの取れた特性から、ダイカスト金型をはじめ幅広い用途で活躍しています。
なお、海外の規格では、米国のH13がSKD61に相当する鋼種としてよく挙げられます。図面や鋼材の資料で見かけた際の参考にしてください。
より過酷な条件に向けた改良鋼
SKD61をベースに、より過酷な条件に対応できるよう改良された鋼材も存在します。「DAC-i」や「DAC-X」といった鋼材がその例です。
どの鋼材が適しているかは、鋳造する金属や製品の形状、求める金型の寿命などによって変わります。鋼材の特性を理解したうえで、金型メーカーや鋼材の供給元と相談しながら選ぶことが大切です。
硬さと粘りの関係 ─ バランスが重要
ダイカスト金型鋼は、焼入れによって硬さを高めます。焼入れとは、鋼を高温に加熱したあと急冷して硬くする熱処理のことで、通常はその後に焼戻し(比較的低い温度での再加熱)を行って、硬さと粘りを調整します。
硬いほど摩耗には強くなりますが、その分粘り(靭性)が低下し、割れやすくなるという側面もあります。反対に、粘りを重視して硬さを抑えると、割れにくくなる代わりに摩耗には弱くなります。
| 比較項目 | 硬さを高めた場合 | 粘りを重視した場合 |
|---|---|---|
| 摩耗への強さ | 高い | 低くなりやすい |
| 割れ・欠けへの強さ | 低くなりやすい | 高い |
このように、硬さと粘りはトレードオフの関係にあります。用途に合わせて、硬さと粘りのバランスを考慮した鋼材選びと熱処理を行うことが重要です。
ダイカスト金型鋼の加工と深穴加工のポイント
加工に専門的な技術が必要な理由
ダイカスト金型鋼は合金元素を含む工具鋼で、特に焼入れ後は非常に硬くなります。そのため、加工には専門的な技術と設備が必要です。
金型づくりには、キャビティ(製品の形を写し取るくぼみ)の形状加工や仕上げなど、多くの工程があります。なかでも、冷却用の水穴などを掘る「深穴加工」は難易度が高く、特に注意が必要な工程です。
冷却用の水穴が重要な理由
金型の内部には、冷却水を流すための穴(水穴)が設けられます。水穴で金型の温度を適切に保つことは、鋳造品の品質を安定させるうえでも、加熱と冷却の繰り返しによる金型への負担を抑えるうえでも欠かせません。
水穴は金型の奥深くまで細長く加工する必要があるため、穴の曲がりや位置のずれが起きやすくなります。穴が曲がると、キャビティや他の穴との距離が設計どおりにならず、冷却のムラや金型の強度低下につながるおそれがあります。
細く深い穴にはガンドリル加工
細く深い穴をまっすぐに加工する代表的な方法が、ガンドリル加工です。ガンドリルは、工具の内部からクーラント(切削油)を送り込み、切りくずを工具の溝に沿って穴の外へ排出しながら加工する深穴専用の工具で、穴の真直性(まっすぐさ)を保ちやすいことが特長です。仕組みの詳細は、ガンドリルとはのページで解説しています。
穴が深くなるほど、工具のたわみや切りくずの詰まりの影響を受けやすくなるため、専用の機械と工具、加工条件のノウハウが品質を左右します。近年は、自動車の車体部品をアルミで一体鋳造するメガキャスティングも注目されており、大型ダイカストと深穴加工の関係についてはメガキャスティングが拓く自動車製造の未来で紹介しています。
金型の深穴加工はハイタックにお任せください
株式会社ハイタックは、ガンドリルマシンの製造販売と深穴受託加工を行う、深穴加工の専門メーカーです。1990年の東洋ハイタック設立以来の経験を活かし、自社製ガンドリルマシン35台と1,000種類以上の工具を保有しています。
対応穴径はφ0.5〜30mmで、長さ3,000mmの長尺深孔加工にも対応し、試作1本から量産までご依頼いただけます。ISO 9001:2015の認証も取得しています。詳しくは深穴受託加工ページをご覧ください。
よくある質問
ダイカスト金型鋼の代表的な鋼種は何ですか?
代表的な鋼種はSKD61です。耐熱性・耐摩耗性・靭性のバランスが取れており、幅広い用途で使われています。より過酷な条件に向けては、SKD61をベースに改良された「DAC-i」や「DAC-X」などの鋼材もあります。
金型鋼は硬ければ硬いほど良いのですか?
必ずしもそうではありません。焼入れで硬さを高めると摩耗には強くなりますが、粘り(靭性)が低下して割れやすくなります。用途に合わせて、硬さと粘りのバランスを考えることが重要です。
ダイカスト金型の水穴加工はなぜ難しいのですか?
硬い金型鋼に、細く深い穴をまっすぐ、決められた位置に加工する必要があるためです。穴が曲がると冷却の効き方や金型の強度に影響するおそれがあるため、ガンドリルをはじめとする深穴加工専用の設備と技術が求められます。
まとめ ─ 金型鋼選びと深穴加工が製品の品質を左右する
ダイカスト金型鋼には、耐熱性・耐摩耗性・靭性・加工性の4つの特性が求められます。代表鋼種のSKD61やその改良鋼の中から、硬さと粘りのバランスを考えて、用途に合った鋼材を選ぶことが大切です。
また、金型の冷却を担う水穴などの深穴加工は、金型の寿命を左右する重要な工程です。用途に合った鋼材を選び、信頼できる金型メーカーや加工会社に依頼しましょう。
ダイカスト金型の深穴加工が必要な場合は、お問い合わせページから株式会社ハイタックへお気軽にご相談ください。
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その穴、
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